守屋賞について
守屋賞の募集については、毎年度6月初め〜9月末に行っています。
詳しくは、下記要項をご覧ください。

守屋賞募集要項

[守屋賞の概要と対象]
 守屋賞は、長年刑事裁判や少年審判に携わってきた元裁判官の守屋克彦氏が資金を提供して創設したNPO法人「刑事司法及び少年司法に関する教育・学術研究推進センター」(略称「刑事・少年司法研究センター」〈ERCJ〉)が、刑事司法、少年司法の実務と理論の発展のために設けた賞です。
 賞は、大きく二つの領域にわけられます。
「守屋研究奨励賞」
 若手研究者などの刑事司法、少年司法にかんする研究活動、出版活動を奨励・助成することを目的として設けました。賞の対象は、@当該研究がそれ自体として出版に適していると判断されるもの、Aそれ自体としてはいまだ出版に適していないが、追加的研究をすることによって、最長3年以内に単行本化が見込まれるもの、Bすでに出版されたものであるが、さらに、今後の発展が期待されるもの、のいずれかに該当するものです。
「守屋賞」
 刑事司法と少年司法の理論活動、実践活動等(教育活動、市民活動を含む)の領域における貢献が顕著であると判断される業績に対して顕彰します。主として、その年に特に注目される業績が対象となりますが、これまでに積み重ねられた業績が対象になることもあります。
「守屋研究奨励賞」「守屋賞」受賞者には、正賞(盾)と副賞(賞金)を贈呈します。
※「守屋研究奨励賞」「守屋賞」は、(株)日本評論社の協力を得て運営します。
[応募要領]※2023年度の応募は終了しました。2024年度の応募については改めて告知いたします。
応募期間:2023年9月20日(水)必着とします。
応募方法:
「守屋研究奨励賞」「守屋賞」のいずれであるかを特定して、対象となりうると考える業績を推薦理由とともに、「刑事・少年司法研究センター」事務局に郵便またはファックスで送付してください。業績が大部の場合には、その要旨でかまいません。また候補の業績については、他薦、自薦を問いません。
賞の選定:「刑事・少年司法研究センター」理事会において行います。
賞の対象業績の発表:
「守屋研究奨励賞」は月刊「法律時報」(日本評論社刊行)誌上に公表します。「守屋賞」は月刊「法学セミナー」(日本評論社刊行)誌上に公表します。
表彰式:本法人主催の講演会(例年12月開催)の際に行います。
この賞についての送付・問い合わせは、下記で受け付けます。
〒170-8474 東京都豊島区南大塚3丁目12番4号 (株)日本評論社内
「刑事・少年司法研究センター」事務局
Tel.03-6744-0353 Fax.03-6744-0354
これまでの受賞者
2023年度
第11回守屋賞 受賞者
  香川 まさひと 氏(脚本家、漫画原作者)
 
受賞対象業績: 『前科者』(作:香川まさひと、画:月島冬二、小学館、2018年〜)
受賞理由: 保護司である主人公が、様々な対象者(前科者)と向き合い奔走する姿を描くとともに、一般にあまり知られていない保護司の存在の周知、保護司の活動の実態と問題点、そして前科者と呼ばれる人々の立直りの難しさや葛藤を、昨今の社会問題も絡めリアルに表現している。丁寧な調査と地道な取材に基づいて構成された物語を高く評価する。
  土井 瑙栫@氏(青少年希望の家「土井ホーム」代表、一般社団法人おかえり基金理事長)
 
受賞理由: 心に大きな傷を持つ子どもたちを癒し、自立支援をする、日本で唯一の「治療的里親」として、この47年間で200人以上の子どもたちの自立支援に携わる。また、ホームレスや薬物依存者、少年院や刑務所から社会復帰を目指す若者など、社会から排除され、行き場のない人たちへの支援活動も行う。このような社会に貢献する諸活動に対して心から敬意を表する。
  野田 詠氏 氏(特定非営利活動法人チェンジングライフ理事長)
 
受賞理由: 生まれ育った東大阪市で牧師をしながら、少年院の出院後に帰る場所のない少年のための自立準備ホームや、行き場のない少年のための自立援助ホームを運営。自身も少年時代に道を踏み外したが、三浦綾子の小説と聖書に出会い、生き方を変えた経験を持つ。「裏切られることも少なくないが諦めない」と、少年たちと向き合いながら生きる姿勢とその活動は称賛に価する。
2023年度
第7回守屋研究奨励賞 受賞者
  西 愛礼 氏(弁護士)
 
受賞対象業績: 『冤罪学――冤罪に学ぶ原因と再発防止』(日本評論社、2023年)
受賞理由: 本書は冤罪の原因と予防、その救済について総合的・体系的に検討した初の本格的な冤罪研究書である。また、広く一般市民に冤罪への関心とその問題性の認識を喚起する啓蒙書でもある。冤罪事件の膨大な資料と冤罪研究の成果を丹念に渉猟して精密に読み込み、冤罪研究の深化に果敢に挑んだ西氏の熱意と、研究成果を一書にまとめ上げたその研究力量は評価されるものであり、今後の研究の発展を期待する。
2022年度
第10回守屋賞 受賞者
  青木 惠子 氏
 
受賞理由: 東住吉事件の冤罪犠牲者として、無罪確定後も冤罪を訴える当事者への支援および救済活動を行っている。冤罪をなくすために、講演活動などを通じて精力的に啓蒙活動に取り組む姿は称賛に値する。
  西山 美香 氏
 
受賞理由: 湖東記念病院人工呼吸器事件の冤罪犠牲者として、無罪確定後、冤罪で苦しむ人たちへの支援活動に携わり、自身の経験を積極的に話すことで、取調べ過程の適正化を目指す活動を高く評価する。
2021年度
第9回守屋賞 受賞者
  鴨志田 祐美 氏(弁護士)
 
受賞対象業績: 『大崎事件と私――アヤ子と祐美の40年』(LABO、2021年)
受賞理由: 大崎事件を通じて、通常はわかりにくく深刻な現行再審制度に内在する問題点を法曹及び研究者のみならず一般読者へと広く知らしめた功績は高く評価されるものである。
  特定非営利活動法人セカンドチャンス!
 
受賞理由: まっとうに生きたいと願う少年院出院者が「孤立しない」「一人にならない」「孤独にならない」「仲間としてつながる」ことを目的に、地域交流会、全国合同合宿などを行い、全国のグループをつなぐネットワークとしての役割も果たしている。「心の居場所」をつくるための活動を高く評価する。
2021年度
第6回守屋研究奨励賞 受賞者
  関口 和徳氏(愛媛大学)
 
受賞対象業績: 『自白排除法則の研究』(日本評論社、2021年)
受賞理由: 著書では、いわゆる「競合説」に立って自白法則(自白排除法則)を再構成すべきことを提唱しているが、関口氏はこの競合説の通説化に大きく貢献してきた。また、アメリカのミランダ・ルールの過去と現在を検証・参照することで身体拘束中の取調べと自白法則を有機的に一体のものとして理論構成(再構成)すること、競合説を基点に自白法則に関する膨大な判例の整理・分析を行い、判例の「問題点」の克服に成功した。
2020年度
第8回守屋賞 受賞者
  坂上 香 氏(ドキュメンタリー映画監督)
 
受賞対象業績: 『プリズン・サークル』(2019年、公開2020年)
受賞理由: 島根あさひ社会復帰促進センターで実施されている処遇プログラム、TC(Therapeutic Community:回復共同体)に2年間にわたって密着し、受刑者が徹底した「語り合い」や人間関係の構築によって新たな価値観や生き方を身につけ、人間的成長を遂げていく姿を描いている。初めて日本の刑事施設にカメラを入れて、刑務所の人道的な構造改革の必要性と処遇プログラムの実現可能性を明らかにしたことは高く評価される。
  五十嵐 弘志 氏(特定非営利活動法人マザーハウス)
 
受賞理由: 受刑生活の際に出合ったキリスト教や人との交流を通じて自分自身と向き合うことができた経験から、受刑者に出会いの場を提供することの必要性を痛感し、出所後「マザーハウス」を立ち上げる。受刑者の回復支援と社会復帰支援および啓発活動に取り組む。元受刑者と社会をつなぐ活動は称賛に値する。
  一般社団法人裁判員ネット
 
受賞理由: 裁判員制度の賛否に関わりなく、市民の視点から同制度についての議論の機会をつくり、あるべき姿を模索し、情報発信を行いたいとの思いから設立された。裁判員裁判を傍聴し市民の視点からチェックする「裁判員裁判市民モニター」、裁判員制度を考える場としての「フォーラム」、裁判員制度の改善に関する提言活動等、裁判員制度を支える地道な活動は高く評価されるものである。
  デイビッド・T・ジョンソン 氏(ハワイ大学)
 
受賞対象業績: 『アメリカ人のみた日本の死刑』(笹倉香奈訳、岩波新書、2019年)
受賞理由: アメリカ人研究者(法社会学)の視点から日本の刑事司法について独自な研究業績を蓄積してきた。著書では、日本の死刑制度をアメリカとの比較の視点から批判的に分析して、その問題点を一般の読者にもわかりやすい表現で伝えている。日本で死刑制度について議論する人々に貴重な示唆を与える業績である。
2019年度
第7回守屋賞 受賞者
  浅見 理都 氏(漫画家)
 
受賞対象業績: 『イチケイのカラス』(講談社、2018〜2019年)
受賞理由: 刑事裁判の傍聴や詳細な取材活動によって、とかく難しく捉えられがちな「刑事裁判」と「刑事裁判官」の姿をわかりやすく、かつリアルに描き、広く一般に紹介した業績を讃える。
  中本 忠子 氏(特定非営利活動法人食べて語ろう会)
 
受賞理由: 様々な生きにくさを抱え、食事をまともにとれず居場所がない子どもたちへ食事の提供等を行うことで、非行・再非行防止の支援活動を行っている。「食べること」を通じて、人間の信頼と自分を取り戻す力を育み続けた努力と継続する力に敬意を表する。
2019年度
第5回守屋研究奨励賞 受賞者
  安田 恵美 氏(國學院大學)
 
受賞対象業績: 『高齢犯罪者の権利保障と社会復帰』(法律文化社、2017年)
受賞理由: 高齢犯罪者の収容傾向の原因究明と併せて、多くの高齢者の施設収容によって処遇を実務的に考えなければならない問題が深刻化している。安田氏の著書では、こうした現状を認識した上で、高齢受刑者の人権問題と社会復帰に関わる問題についてフランスを参考に議論を深めており、今後の研究の発展が期待される。
  大谷 彬矩 氏(立命館大学)
 
受賞対象業績: 「ドイツ行刑における社会との同化原則の意義」(法政研究84巻4号、2018年)、「『行刑の社会化』論の再検討――代替概念としての『同化原則』の可能性」(法政研究84巻2号、2017年)、「行刑における社会との同化原則の意義」(2017年)
受賞理由: 現在、法制審議会の部会で刑事政策の全般的な見直しが進められており、自由刑の純化も同化も認めず、作業だけでなく様々な処遇をも義務付ける方向にある。これに対して、自由刑の単一化、自由刑の純化と同化原則、消極的方向での同化の否定ないし制限の三つを主軸とし、行刑における同化原則の重要性を主張する大谷氏の研究の意義は大きい。引き続き研究の発展が期待される。
2018年度
第6回守屋賞 受賞者
  社会福祉法人大阪ボランティア協会“裁判員ACT”裁判への市民参加を進める会
 
受賞理由: 市民の視点から司法制度全般や裁判員制度について学習して実情を検証したり、政策提言を行ったりするほか、一般市民を対象とした定期的な学習会や裁判傍聴会、「司法と社会的孤立」の問題についての連続公開講座等を開催。活動開始後、一貫して市民の目線から、司法制度に対する社会の関心の向上に貢献している。
  特定非営利活動法人再非行防止サポートセンター愛知
 
受賞理由: これまで約100人の非行少年および保護者をサポートし、粘り強く支援活動を行っている。2018年8月に、NPO法人チェンジングライフ、NPO法人食べて語ろう会とともに、「全国再非行防止ネットワーク協議会」を設立。地道な活動を経て全国的なネットワーク構築を目指した協議会の設立にまで漕ぎ着けた努力は、敬意と称賛に値するものである。
  清永聡氏(NHK解説委員)
 
受賞対象業績: 『家庭裁判所物語』(日本評論社、2018年)
受賞理由: 当事者やご遺族への綿密な取材、国立公文書館での資料収集により、実に正確でヴィヴィットな家庭裁判所70年の記録が記されている。本来このような仕事は最高裁判所自身がやらなければならないが、裁判所関係者ではない清永氏によって書かれたがゆえに、国民により身近な存在としての家庭裁判所の姿が立ち現れている。本書は現在、家庭裁判所で仕事をしている多くの方々に勇気と誇りを与えるものである。
2017年度
第5回守屋賞 受賞者
  阿部 恭子氏(特定非営利活動法人World Open Heart)
 
受賞対象業績: 『交通事故加害者家族の現状と支援――過失犯の家族へのアプローチ』(阿部恭子著、草場裕之監修、現代人文社、2016年)
『加害者家族支援の理論と実践――家族の回復と加害者の更生に向けて』(阿部恭子編著、草場裕之監修、現代人文社、2015年)
受賞理由: 公的な支援の途が開かれていない加害者家族を対象とした実際的な支援活動への取り組みは、この国の文化に貢献するものと評価する。加害者家族への支援活動をされるだけでなく、その成果を著書として出版され、精力的に活動を展開されている。
2017年度
第4回守屋研究奨励賞 受賞者
  安部 祥太氏(青山学院大学)
 
受賞対象業績: 「被疑者取調べの憲法的規制――日韓両国におけるMiranda法理の継受と変容」
受賞理由: 本論文は、ミランダ法理が韓国と日本でどのように受け止められてきたかを比較することを通じて、日本で被疑者取調べを憲法によって規制する論理を組み立てようとする試みである。ミランダ法理を位置付けた上で、被疑者取調べの憲法的な規制の論理について、日・米・韓3カ国での法形成の過程を比較することによって、日本法の特徴と問題点を浮き彫りにしている。また、従来日本の刑事法学界で研究が少なかった韓国法について、重要な知見をもたらしている。今後も研究が持続的に展開されることに期待する。
2016年度
第4回守屋賞 受賞者
  桜井 昌司 氏(布川事件当事者)
 
受賞理由: 布川事件の当事者であるご自身の経験から、同じような苦しみを受けている人々に力を貸そうと心がけられ、仮釈放後、著書『獄中詩集 壁のうた―― 免罪布川事件 無実の二十九年・魂の記録』(高文研、2001年、CD付きで2011年再刊)を刊行されるなど、冤罪を訴える活動の支援や取調べの可視化を求める活動に取り組まれている。この国から冤罪をなくすことを願っての活動のエネルギーは、この国の刑事司法をめぐる文化に活力を与えるものである。
  佐藤 大介 氏(共同通信社記者)
 
受賞対象業績: 『ドキュメント死刑に直面する人たち――肉声から見た実態』(岩波書店、2016年)
受賞理由: 著書では、日本では死刑制度についてその実態がほとんど明らかにされておらず、死刑制度賛否の議論も空転しやすいという現状に問題意識を持ち、様々な壁に突き当たりながらも広範な関係者へ取材を試みている。死刑を考える上での確かな情報源と正確な視点を与えるという点で、類書に抜きんでたドキュメンタリー作品である。
2016年度
第3回守屋研究奨励賞 受賞者
  丸山 泰弘 氏(立正大学)
 
受賞対象業績: 『刑事司法における薬物依存治療プログラムの意義――「回復」をめぐる権利と義務』(2015年、日本評論社)
受賞理由: 覚せい剤取締法違反事件は、その捜査と再犯防止を名目に、警察を代表とする国の権力が強化された分野である。一方で、近年では、再犯防止のための治療的プログラムにも手が伸ばされるようになってきた。著書は、このような権力の介入と回復者の人権との間に矛盾はないのか、国の治療目的の介入が無限定な権力の行使として保安処分化することはないのかという問題について、日米の薬物対策を比較検討しながら、あるべき姿を考察している。今後の研究の発展に期待する。
2015年度
第3回守屋賞 受賞者
  毛利 甚八 氏
 
受賞理由: 漫画『家栽の人』の原作から始まり、生涯を通して、少年司法の理念を問い続け、実践においてそれを追求されようとした業績は、少年司法の文化の向上のために、余人では果たし得ない貴重な貢献をされたものとして讃える。
  田口 真義 氏
 
受賞理由: 裁判員経験者として、裁判員経験者の交流の場「Lay Judge Community Club〜裁判員経験者によるコミュニティ〜」を立ち上げ、裁判員経験者の体験を基にした編著書『裁判員のあたまの中――14人のはじめて物語』(現代人文社、2013年)の出版やその他刑事司法領域に関わる継続的な活動を行う等、刑事司法の文化の向上に寄与された業績を讃える。
  特定非営利活動法人監獄人権センター
 
受賞理由: 刑務所、拘置所等刑事施設の実態を把握し、制度の問題点を指摘し、改善の提案を行う等、刑罰の執行面の改善や人権の確保に営々として取り組んだ20年の業績を讃える。
  季刊刑事弁護(現代人文社)
 
受賞理由: 当番弁護士の創設に始まる被疑者国選弁護制度・少年審判への国選付添人の実現などの人権の擁護と伸張、取り調べの録音・録画の実施や証拠開示範囲の拡張などの捜査方法の改善、冤罪の予防や再審門戸の開放など、裁判員裁判の開始も伴って、山積する刑事司法・少年審判の課題に取り組む弁護士や研究者の座右の誌としての位置を確立するにいたった20年の業績を讃える。
2015年度
第2回守屋研究奨励賞 受賞者
  竹原 幸太 氏(東北公益文科大学)
 
受賞対象業績: 『菊池俊諦の児童保護・児童福祉思想に関する研究――戦前・戦中・戦後の軌跡と現代児童福祉法制への継承』早稲田大学モノグラフ117(早稲田大学出版部、2015年)
受賞理由: 著書において、児童保護事業に携わった菊池俊諦の人と思想を、広範囲に収集した資料をもとに、的確な分析・総合を行いその成果をまとめた。児童福祉・少年司法の理念に関わる基礎的な研究であり、さらなる研究の展開が期待される。
  廣末 登 氏(NPO法人市民塾21/CDA)
 
受賞対象業績: 『若者はなぜヤクザになったのか――暴力団加入要因の研究』(ハーベスト社、2014年)
受賞理由: 著書において、元暴力団構成員のライフヒストリーを、回想的に、物語形式で、主観的な視座から聞き取るという困難な調査を行い、これを社会学的視座から分析・検討している。とかく、上滑りになりやすい暴力団調査において、反構造化面接調査というインタビューに基づいた精緻かつ慎重な研究であり、余人の追従を許さない力作として、今後が期待される。
  斎藤 司 氏(龍谷大学)
 
受賞対象業績: 『公正な刑事手続と証拠開示請求権』(法律文化社、2015年)
受賞理由: 著書において、現状の捜査側の一極的な証拠収集手続であるからこそ、被疑者・被告人側の主体的な手続への関与によって、証拠収集や開示に生じうる偏りを是正する必要があり、その前提として、原則的全面開示が必要であると論じている。大正刑事訴訟法以前の我が国の職権主義的な法制や同じく職権主義を採用しているドイツ法制までを渉猟し、この分野に対する新たな視点を提供したものと評価されており、今後が期待される。
2014年度
第2回守屋賞 受賞者
  片山 徒有 氏
 
受賞理由: 犯罪被害の当事者として、「被害者等通知制度」を導入するきっかけを作り、犯罪被害者対応の制度改革の先駆者的な役割を果たされた。また、その後も、バランスのとれた刑事司法を求めて、被害者の視点を正しく組み入れるための努力を持続的かつ建設的に続けられている。
  周防 正行 氏
 
受賞理由: 監督作品『それでもボクはやってない』によって、刑事司法制度の改革の必要性を訴えた。また、「新時代の刑事司法制度特別部会」の委員として、「取り調べの全面可視化」「証拠の全面開示」「人質司法を改善すること」を主張するとともに、その審議の状況を発表されている。
2014年度
第1回守屋研究奨励賞 受賞者
  岡邊 健 氏
 
受賞対象業績: 『現代日本の少年非行――その発生態様と関連要因に関する実証的研究』(現代人文社、2013年)
受賞理由: 著書において、刑事司法システムにおいては、可能な限り確度の高いエビデンスに基づいて政策決定がなされるべきであるのに、確実な情報や不正確な認識が信じられているのではないか、という問題意識の下に、少年非行の発生態様や非行関連要因などを、公式データを駆使して客観的な視点を確立しようとする研究の出発を示した。
  武内 謙治 氏
 
受賞対象業績: 『少年司法における保護の構造――適正手続・成長発達権保障と少年司法改革の展望』(日本評論社、2014年)
受賞理由: 著書において、少年法について、現在の問題状況の全体的な見取り図を素描し、少年保護のあり方の根本的な問題である少年の処遇や身体拘束処分に関係する問題、少年保護手続き、とりわけ少年審判手続の適正手続保障の問題、さらには少年保護と緊張関係に立つ裁判員裁判と検察官送致、刑事裁判のあり方にまで思索の枠を広げた。
  本庄 武 氏
 
受賞対象業績: 『少年に対する刑事処分』(現代人文社、2014年)
受賞理由: 著書において、少年の刑事事件の量刑の領域に踏み込み、基礎理論としての「少年の刑事責任のあり方」、「家庭裁判所の逆送決定と刑事裁判所からの移送」、「少年に対する刑事処分のあり方」「少年に対する死刑の問題」、さらに厳罰化からの反省期に入ったとみられるアメリカの判例法を踏まえて、日本においても少年に対する適正な刑事処分のあり方を考えるべきだとする問題を提起した。
2013年度
第1回守屋賞 受賞者
  堀川 惠子 氏
 
受賞対象業績: 『死刑の基準――「永山裁判」が遺したもの』(日本評論社、2009年)
  『裁かれた命――死刑囚から届いた手紙』(講談社、2010年)
  『永山則夫――封印された鑑定記録』(岩波書店、2013年)
受賞理由: 死刑問題について、丹念な取材活動を行い、3冊の書籍としてまとめ、広く日本の死刑制度への問題提起と啓蒙を行っている。
  山田 悦子 氏
 
受賞理由: えん罪・甲山事件の当事者として、無罪確定後も日本の刑事司法の問題点の指摘、改革すべき点を著書、講演活動、研究会などを通じて精力的に啓蒙活動を行っている。
   
 
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